代々契約している悪魔に憎悪と怨嗟の感情を届けるべく、悪業に精を出す領主ルドルフ。だが彼は知らない。彼のやること成すこと、すべてが善行と受け取られ、怨嗟どころか、人々に感謝されまくっていることを…!

というわけで、領主ルドルフ視点と、彼の悪業の標的とされた当事者視点で、同じ出来事が語られる異色作。大変面白かったです。
領主側の視点ではルドルフの心情が語られているので、彼が100%悪意に満ちた行動をしているのは解るのですが、それが当事者側から見ると…ルドルフの思惑とは裏腹に、全てが裏目に出て(善意からの行動と思われて)いて「なんて素晴らしい人だ!」と評判がうなぎ上りになっちゃうという。パターンは毎回同じですが、「この行動、当事者からはどう見えるのかな?」と一種の種明かしを楽しむ気分でワクワクできます。
物語の構成上、領主側・当事者側の2回同じ話が語られることになるのですが、セリフや状況説明等の選択がよく考えられているようで、冗長感を感じさせなかったのも良かったですね。
折り込みペーパー(多分初版特典)ではルドルフの魂と悪魔の関係が少しだけ明かされていて、こちらも楽しかったです。この悪魔さんさぁ…気の毒すぎるというか、もう諦めるしかないんじゃね?(笑)