一応は貴族なのに貧乏すぎて、父に冒険者として稼ぐよう強要され、貧弱装備で仲間も無いまま何とかやっていたが、ついにスケルトンに惨殺されてしまった主人公。だが次に気付くと子供時代に逆戻りしていた。今度は悲惨な結末を迎えたくない主人公は、笑顔を絶やさず(前回は根暗で仲間が出来ずソロ活動で殺されたから)、外見を磨き(適当に裕福な結婚相手をゲットするため)、狩りに励んで獲物をゲット(栄養失調で貧弱だった身体を育てるため)、回復薬作りを習得(健康第一!売り物にもなる!)…と、数々の努力を重ねた。その結果、幼くして高度な魔法を使いこなし太陽のような笑顔が眩しい完璧令嬢となった主人公だったが、そんな彼女を自慢に思うあまり父と領民が「彼女は世界に羽ばたいて名声を得るべき!」と団結し、仮病を使って「医療費が必要だから」と主人公を冒険者として送り出してしまう。そんなこととは知らない主人公は「みんなが前回の人生では無かった病気になってしまったのは自分が行動を変えたせい」と思い込み、冒険者稼業に精を出す。父の心尽くしの特注ドレス装備で華麗に戦う主人公はすぐに人気者になったが、ある日「国王の飼い犬」と呼ばれる乱暴な獣人冒険者と組むことになり…

というわけで、小心者で金に汚い主人公が、何故か”心優しく清らかな聖女”に勘違いされていく話。面白かったです。

主人公は基本的にその場しのぎで適当な事を言っているんですが、その発言は大抵が周囲にめちゃくちゃ好印象な勘違いをされます。そして小心者ゆえにその期待を裏切れない主人公が内心大泣きしながらも色々と偉業を成し遂げちゃってます。
うん、実際にやった内容だけを客観的に見れば紛うことなき聖女様ですね。読者は内心を知ってるだけに気の毒やら笑えるやら、なんですが。いえもうひたすら笑ってるんですが!勘違いもここまでくればいっそ清々しいですよ!

それにしてもこの話、国王はロクなもんじゃないなと思いながら読んでたんですが、実際に対面してみたら…本当にロクなもんじゃなかったですね。しかも能力はヤバいくらいあるもんだから余計にタチが悪いですね。成り行きとはいえ主人公が正面からタンカ切ってのけた場面はスカッとしました。
この時の主人公の心情、愛が重すぎて変態の域に差し掛かっている自称従者の二人を「国王への暴言で処罰」にさせないために「臣下からの諫言。むしろ褒めるべき行動」に状況をすり替えようとしていたわけで、本人に自覚は無いけど心根そのものは立派に聖女と言えますよね。
この主人公は、金に汚くてゲスい(笑)けど一番大切なところは間違えない、という感じなんですよ。そりゃ周囲の好感度も高くなるってもんでしょう!

獣人冒険者と執事の二人については、主人公に出会えなかった時(いわゆる1周目の世界)の死に様が語られていますが、二人とも主人公にニアミスはしていたんですね。ほんの少しだけ成り行きが違っていたら前の世界でも主人公と人生を共にしていたかもしれなかったのか…。不幸な死に方をした二人ですが、今回は主人公と出会ったことで前回とは比べ物にならないくらい幸せで充実した人生を送れているようで何よりです。重すぎる愛はもう少し何とかした方がいいと思うけどね!


2巻はコチラ

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