海外旅行中の事故で死んだ主人公は、幼い頃に神の眷属である猫を助けていたことから、お礼として異世界に転生することになった。転生先は貧乏農家の一人息子だったが特に不自由なことも無く育ち、ラノベ知識に基づいて訓練するうちに魔法も使えるようになった。多趣味だった前世の知識を駆使して味噌を始めとする調味料を作ったり、難しいとされる甜菜の栽培を成功させて砂糖を作ったりと、様々な料理や甘味を作り出す主人公はいつしか貴族に目を付けられるようになってしまって…

というわけで、主人公が四六時中動き回ってなにか作ってて、全然「のんべんだらり」としてない話。

この世界では5歳で受ける儀式によって神からの恩恵として何かのスキルを授かる設定で、主人公は「器用貧乏」というスキルを貰ったわけですが…正直、どこまでが主人公の元々のスペックでどこからがスキルの効果なのか、よく分かりませんね。魔法とか狩りとかは恩恵を貰う前から普通にチートしてたし、料理は前世知識だし。
それに、”器用貧乏”って「なんでもソツなくこなせるけど、あちこちに手を出し過ぎて大成せず、その道の本職に及ばない」というイメージですが、今のところ「本職に及ばない」かどうかがそもそも分かりません。だって競合他者がいないし!

貴族に目を付けられる展開については…お約束すぎて簡単に予測できるんだから何か手を打っとけよ、と!主人公、ラノベ読んでたんでしょ?ありがちな展開じゃん!
商人さんも、面倒事になりそうだと予想できてたんなら安易に王都で売るなよ…。情報秘匿が条件の会員制にして売るとか、あるいは簡単には手を出せないような実力か後ろ盾のある人にダミーの製作者役を引き受けてもらうとか、手の打ちようはあったと思うんですよね。

それに主人公も、確か最初のうちは「砂糖は面倒なことになりそうだから売らない。自宅で消費するだけ」とか考えてたはずなのにアッサリ売りに出してるし…。売るなら砂糖じゃなくて蜂蜜にしておけば「魔物の蜂蜜だから定期供給できるという確約はできません」と言い抜けることも可能だったのに。
あるいは甜菜の簡単な育て方と精製法の方を売り物にする手もありましたよね。というか手法販売の方がこの先確実に楽に高品質の物が手に入れられますよね…複数の「プロ」と名の付く人が主人公の代わりに作ってくれることになるわけだから。何故そっちを秘匿するのか…一人で作れる量なんてタカが知れてるのに。
色々手を出し過ぎて時間が足りないというなら、他の人にも作れるようになってもらって、いずれは誰でも買える物にしていくという方向性を目指すべきですよ。魔法が前提の物は主人公が自分でやらないと仕方ないとしても、料理やお菓子の作り方を教えないのは何故なんでしょうね…。”村人なら誰でも作れる”という状態になるまでみんなに頑張って覚えてもらって「村の特産品」として売り出せば特定の個人が狙われる危険は減らせるし、基本の作り方さえ教えておけば色々創意工夫して主人公より美味しいアレンジをする人も出てくるだろうし、主人公では思いつかないアイデアを出して別方向に発展させてくれる人もいるかもしれないじゃないですか…。誰がどんな”恩恵”を持っているか分からない世界なんだから、そういうの充分あり得ると思うんですよ。それこそ「料理」が恩恵の人なら絶対主人公より美味しい料理に進化させられそうですよ?主人公は「本職に及ばない”器用貧乏”」なんだから。

なんか、読めば読むほど「なんで一人で全部やろうとしてるの?」と言いたくなります。
主人公が商人を目指しているなら様々な技術を秘匿しておきたいという気持ちも理解できるのですが、この主人公、農家で満足してるらしいし。
現金収入が欲しいというだけなら狩りの獲物だけで既に十分な現金収入を得ていますし。
途中から「夢の不労所得」みたいなことも言い出してますが、それならなおのこと、レシピ販売を考えない理由が分からない。

結局のところ、「主人公いろんな事ができて凄い!」と言いたいばかりに色々な所に目をつぶっている話だなという印象に尽きました。





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