駅の階段から落ちた拍子に異世界に落ちてしまった主人公。公爵家に保護されたのは良いが、悲しいことにこの世界の食事は激マズだった。聞けば400年前に美食の限りを尽くし「美食王」と呼ばれた王が、ある時醜い老婆に食事を乞われ、さんざん罵倒し邪険にした。だが、その老婆は実は魔女であり、美食王の行為の報いとして肉と魚が呪われてしまったのだという。芯まで煮て煮汁も捨てれば毒は抜けるが味はお察し。さらに、野菜や果物、お菓子といった物は呪われずに済んだのに、呪われた張本人である美食王だけは味が分からなくなってしまったため、自分以外の人間だけが料理を楽しむのが許せないと料理人の処刑、レシピ本の焚書と暴挙を尽くした結果、現在ではマトモな料理法すら失われ、素材そのものの味は良いのに活かせないという残念な状況になっているらしい。少しでも美味しい食事をしたい主人公が料理を買って出たところ、公爵家の面々は彼女の作る美味しい料理の虜になっていって…

というわけで、メシマズ異世界の料理革命もの。定番ですが、メシマズにきちんとした理由付けがあって、毒を避けつつ美味しい料理を試行錯誤する過程が楽しいです。さらに、中盤以降は「実は肉の毒はもう無いのでは」と検証実験に入っていくあたりが単なるメシマズ異世界ものとは一線を画していますね。楽しく読めました。

で、この世界には時々マレビトと呼ばれる異世界人が落ちてくるそうですが…初めから言葉が通じる人は元の世界に帰れず、言葉が解らなかった人はいつの間にか消える(戻った?)という、なかなか珍しいというか絶妙に「それ、あんまりじゃない?」という設定になってます。
「仲間たちと一緒にこの世界に来て、自分だけ言葉が通じてラッキーとか思ってたのに、逆に自分だけが帰れなかった」というマレビトさんの話を聞いたら気の毒でならない…。勝ち組だと信じてたら裏切られた感が凄いですね。来た時は仲間がいて心強かったというのに一人で取り残されたんだから余計に。
えぇ…異世界転移なら”言語理解”は全員に付けてあげてよ~、お約束でしょ~? と、最近のラノベ読みなら思わずにいられませんね。ライトノベルというジャンルが確立される前は「異世界=言葉が通じない」は割と当たり前な設定だったんですけどね。慣れってコワい(笑)


一応、”肉の毒がもう存在しない”という事実を隠していた連中についての追及が済んで、主人公はかつて夢見ていた「自分のお店」を持ってめでたしめでたし…なんですが、主人公の父もこちらの世界に来ているのかも?という可能性が示されたので続きもあるかもしれません。
毒抜き試行錯誤の面白さは今巻だけの面白さということになるので、もし続いても今後は普通にお料理改革の話になっちゃうのかな…。だとしたら魅力半減という気もしますね。ただ父の動向だけは気になるので、もし続きが出たら読むかも。その時には現国王のかつての恩人女性のその後についても言及があってほしいところですが、さて?
…タイトルは回収済みなので続巻がこのタイトルだと内容と盛大に食い違うことになるけど、どうするんだろ……やっぱり続巻はないかも…。






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